2011/02/20

■Room■

去年の卒展委員として。


京都市美術館の大部屋を使った、ビジュアルデザイン学科としての初めての試みに対し、
・卒業制作というものの解釈(4年間の集約である以上に、これから羽ばたく事を意識した通過点であるという事)
・ビジュアルにこの部屋を与えて良かったと思わせる事(頂いた部屋の広さをどう活かすかという事)
・これ迄の卒展との差別化(わかりやすい目新しさ)
・個々の作品を一番大切にすること(ビジュアルをくくったコンセプトが、他の作品を包括しない事)


主にこういった項目を意識して考えたテーマは下記の意味合いも込めた「PLAY」。
・次に向かうモチベーション(右向き三角形の再生マーク)
・出展者それぞれのクリエイトを競技(プレイ)に見立てた
・出展者それぞれが楽しんでものづくりをしているという遊び(プレイ)の表し


上記のような、ビジュアルデザイン学科に求められる要求や話し合いで浮かぶ要素をなるだけ括れる
「言葉・コンセプト」として「PLAY」を選んだ。
しかしそれは、文字上で一つの表記にしてしまいたいが為の行為で、混在する目的やコンセプトは、
かえってこの展覧会を一言で言い表しにくいものとしてしまった。
競技コートや公園を見立てた人工芝を惹く事で、ビジュアル的な面白さを狙うも、それにそぐわない
作品群を(上記の会場コンセプトとは無縁の)白いキューブに押し込む形となってしまった。
与えられた広い部屋の意味を保つ為に、会場の端から端が見えるような開放的なレイアウトにしたが、
それは導線の崩壊(これは後のアンケートでわかった事)も招いた。


つまりドメスティックな方向に対する対処ばかりで、本来一番大切にするべき出展者と閲覧者を疎か
にしていたのだ。


年明けにいきなり頂いたDSガイド導入のお話もあり、目新しさが後押ししてくれた結果、アンケート
ではかなりの好評だった事は事実ではあるが。




それから1年。今年度のビジュアルデザイン学科の卒業制作展「Room」を見る。
・決して閉鎖的ではない、導線や空間分けとしての部屋づくり
・単に作品を置くスペースではなく、空間そのものを与えるという事で、個々に最大限の表現の自由を与える
・コンセプトで出展者サイドの意義付けをするのではなく、出展者と閲覧者の為の最もいい環境を作るための徹底した要素排除
個々の世界を自由に魅せるという、わかりやすくそして必須な狙いが全ての要素の根底に見えた。


全てを括らない事で、全てを一言で説明できる会場コンセプトとなっていた。出展者と閲覧者の事が
しっかり考えられていて秀逸だった。


去年を超えてくれと冗談混じりで言っていたのも恥ずかしくなるほど、最高に悔しくて嬉しい、
そんな今年の卒業制作展だった。

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